神保町をふらふらしていたら、谷川俊太郎編『辻征夫詩集』(岩波文庫)が並んでいた。岩波文庫で辻征夫というのは予想外だ。
古本屋で立ち読みしていたら、パディ・キッチン著『詩人たちのロンドン』(早乙女忠訳、朝日イブニングニュース社、一九八三年刊)がおもしろそうだったので買う。ロンドン版の文学散歩みたいな本。
家に帰ってから水木しげる著『人生をいじくり回してはいけない』(ちくま文庫)を読む。『小説すばる』の今月号でもすこしだけ水木しげると鶴見俊輔の対談にふれた。水木しげるは、無政府主義者の石川三四郎の著作を読んでいたという話——。
すこし前に『別冊新評 水木しげるの世界』をようやく見つけて(探していたことすら忘れていたのだが)、水木さん熱が再燃している。
話は戻るが、『人生をいじくり回してはいけない』は名著です。解説は大泉実成(素晴らしい!)。
今の目で歴史を裁いてはいけないということは承知の上だが、どう考えても水木さんを戦場に連れてっちゃいかんだろ、とおもう。
水木さんは、毎日ビンタされていたそうです。
ただ、南方の島で、現地の人が働かずに昼寝ばっかりしている様子を知ったことは、人生観に大きな影響を与えた。
《水木さんは、それほど頭がよくなかったけれども、「生きる勘」を心得ていた。お金を少し儲けて、楽して生きることが本当の幸せだと思ったんだ。今も、その考えは変わらない》
《水木さんは、「自分のやりたいことしかしない」という「水木さんのルール」を作った。ベビーの頃だね。
一番やりたいことは、絵を描いて食べていくことだった。全く迷わなかったし、これからうまくいくだろうか、なんて考えもしなかった。人は、苦手なことでお金を儲けることはできない。好きじゃない仕事に追われたら、貧乏神に取りつかれるよ》