2016/02/19

二十五年前

 水曜日、神保町。信号待ちをしていたら『閑な読書人』(晶文社)の担当編集者のKさんに声をかけられる。神保町で知り合いに会うのはよくあることだが、毎回ドキっとする。

 すずらん通りの古本屋で『PENGUIN?(ペンギン・クエスチョン)』(一九八四年八月号、現代企画室)を買う。二百円。この号の特集は「グリコ事件の『構造と力』」。編集人は中西昭雄、発行人は北川フラム。表紙には朝倉喬司、平岡正明の名もある。「宮松式おしっこ健康法・総集編」という記事も……。

 今月の『小説すばる』の連載「古書古書話」は、竹中労の「80年代ジャーナリズム叢書」(幸洋出版)と『無頼の墓碑銘』(KKベストセラーズ)を紹介した。この連載で竹中労のことを書くのは二回目。

《ぼくははっきりいいますけどサダム・フセインの味方です。ほんらいアラブには国境はなかった》(「戦争はおとぎ話しじゃないんだ」/『無頼の墓碑銘』)

 引用文は『ポップティーン』(一九九一年四月号)が初出。最晩年の竹中労の檄文である。

《単純に、戦争賛成か反対かっていう考えでやっていくと危ないよ。それじゃ、足元すくわれるんじゃないの》

 この言葉は今もひっかかり続けている。