2025/09/09

歌枕と相撲

 九月六日(土)、七日(日)、西部古書会館の均一まつり。本の整理中につき、初日(一冊二百円)は五冊まで。『特別展 東海道・品川宿を駆け抜けた幕末維新』(品川区立品川歴史館、一九九九年)、『日本万歩クラブ編『東海自然歩道全ガイド』(集団形星、一九七〇年)、『環境文化』55号「特集 歴史の道 海上の道」(環境文化研究所、一九八二年)、『環境文化』58号「特集 歴史の道 行基の道」(環境文化研究所、一九八三年)、皇學館大學『伊勢志摩を歩く』(皇學館大學出版部、一九八九年)など、街道関係の資料を買う。『環境文化』の古道の特集は面白い。八〇年代の雑誌、ページに熱がある。今回は買えなかったが、51号の特集「歴史の道 河内古道と伊勢みち」も読みたい。
 歴史の道シリーズはガイドブックも刊行しているようだ。

 七日(日)も古書会館(一冊百円)。昨日、街道関係の資料をいろいろ買って満足したので行くかどうか迷ったが、夕方ちょっとだけ見に行く。『西脇順三郎対談集 詩・言葉・人間』(薔薇十字社、一九七二年)など六冊。武田泰淳や福原麟太郎との対談も収録。行ってよかった。本に呼ばれたような気がする。

 夜、馬橋稲荷神社の例大祭。神楽を見て生ビール。帰り道、西友でサーモンとイクラの寿司を買う。
 深夜日付が変わって午前二時半、駅前まで歩いて皆既月食を見る。

 八日(月)、午後三時すぎ、野方散歩。ひさしぶりに妙正寺川のでんでん橋を渡る。肉のハナマサで調味料と乾物と喜多方ラーメン(しょうゆ味、三袋入り)など。帰りは大和町を通り、高木精肉店でアジフライを買う。この店、惣菜が何でもうまい。ササミチーズカツ、クリームコロッケもおいしい。湿度が高くて汗だくになる。家に帰ってしばらくして雨が降りはじめる。

 八月二十五日の文壇高円寺「祭りのあと」に「たしか丸谷才一のエッセイにも相撲と地名の話があった。どの本だったか……」と書いた。

 先週、コクテイル書房に飲みに行った。品品(世田谷ピンポンズ)さんのライブもあった。隣の共同書店に丸谷才一著『袖のボタン』(朝日文庫、二〇一一年)があり、帯の「相撲と和歌」という言葉が目に入る。これだ。

《相撲と和歌は切つても切れない仲であつた》

 という一文から同エッセイははじまる。歌合を主催していた在原行平は、節会相撲の統括者でもあった。

《相撲の年寄名が、
  春日野
  九重
  宮城野
  片男波
  放駒
 などと優美なのはもちろん歌語であるせいだが、おそらく行平は左右の相撲人たちに、歌枕その他を引いて醜名をつけ、それが伝統となつたのではないか。それとも歌ことばを醜名とする風俗は、行平を記念するこころで生じたものか》

 街道、歌枕に興味を持つようになって、春日野は奈良、片男波は和歌山の地名と知った。それまで相撲を見ていてもそういうことを考えたこともなかった。
 ほかにも歌枕をもちいた年寄名に音羽山や田子ノ浦などがある。

 相撲と和歌の話を続けると、相撲が季節ごとに東京、大阪、名古屋、福岡と巡業するのも歌枕と関係あるかもしれない。地図を見る。

 春場所の大阪府立体育会館のある難波は歌枕の地だし、九州場所の福岡国際センターは歌枕の地である荒津崎と近いといえば近い。名古屋場所の愛知県体育館は名古屋城の近くだが、同市内であれば、熱田、年魚市潟(あゆちがた)、鳴海など歌枕の地で開催してもらいたい。

 ちなみに両国は数多くの和歌に詠まれた隅田川(すみだ川、すみだ河)が流れている。行平の異母弟の在原業平と隅田川は縁が深い。ふと業平橋はどのあたりにあるのか気になる。もともと、とうきょうスカイツリー駅(東武伊勢崎線)は業平橋駅(一九三一年改称)という駅名だった。

 さらに昔は吾妻橋駅(一九〇二年開設)、浅草駅(一九一〇年改称)と名前がころころ変わっている。業平橋駅に改称したのは一九三一年、とうきょうスカイツリー駅になったのは二〇一二年である。

 東京の東側、いまだに土地鑑がない。