2026/08/08

博多まで

 今年の八月でブログをはじめて二十年になった。二十年前の自分は何をしていたのか。この二十年で何がどう変わったのか。
 わたしは三十六歳から五十六歳になり、今も高円寺にいてライターをやっている。

 八月二日(日)、午前八時ごろ、駅の券売機の「おトクなきっぷ」コーナーで青春18きっぷ(3日間用)を買う。一万円。新宿駅から湘南新宿ライン、小田原駅へ。小田原〜熱海間は車窓が楽しい。熱海駅で一度途中下車。家康の湯(足湯)の手前の駅前の熱海第1ビルで一休み。ファミリーマート熱海春日町店でお茶を買う。

 熱海駅からJR東海道本線に乗って適当に途中下車しながら名古屋を目指す。
 由比駅から薩埵峠を通り、興津駅。この区間も海が近い。
 大井川の手前の島田駅で途中下車して旧東海道をすこしだけ歩く。浜松駅から豊橋駅。東海道本線は舞阪駅から新居町駅の区間の車窓もいい。たぶん海の近くを走る電車が好きなのだろう。
 このあたりまで来ると名古屋は近いという気分になる。

 午後三時ごろ、名古屋駅着。地下街のエスカでスガキヤラーメンを食べ、JR関西本線で四日市駅へ。この日は大入道が名物の「大四日市まつり」を開催していた。太鼓の音を聞きながら、近鉄四日市駅へ。コンビニでビールを買って郷里鈴鹿の家に向かう。

 八十三歳の母は元気。エアコンのリモコンの電池を交換する(母はエアコン嫌い)。

 八月三日(月)、午前七時台の電車で津駅へ。JR紀勢本線で亀山駅に向かう。遠回りだが、青春18きっぷの期間中なので鈴鹿からバスで行くより安くすむ。時間はほぼ変わらない。紀勢本線に乗るのは十五年ぶりくらいか。

 亀山駅から柘植駅。次の電車が来るまで二十分以上あるので駅の外に出る。柘植は芭蕉ゆかりの余野公園、横光利一ゆかりの横光公園などもある。JR草津線で草津駅。新快速で姫路駅へ。姫路駅に着いたのは午後二時半くらい。

 この日は夕方六時に博多駅で『怪獣と老人』の中野伸郎監督と待ち合わせ。さすがに鈍行では間に合わない。
 姫路駅で博多駅までの新幹線の自由席の切符を買い、こだまで岡山駅。岡山駅からさくらに乗り、予定より早く着きそうだったので小倉駅で降り、新幹線の駅の構内で休憩する。中野さんに「小倉駅まで来た」とメールを送信する。スマホ、携帯電話は持っていないが、旅先ではキンドルでメールの送受信ができる。

 博多駅の待ち合わせ場所に行くと、中野さんから「新幹線の改札で待っている」とメール。博多駅、新幹線の改札が三箇所ある。困る。ひかり広場改札口で合流し、中野さんにとってもらった中洲のカプセルホテルへ。

 中野さんと知り合ったのは近所の飲み屋。フリーランスでテレビの仕事をしていると聞いた。一九七〇年生まれで年は一つちがい。中野さんの高校時代の恩師(軟式野球部の監督)が福岡で喫茶店をやっていて、わたしの本を読んでいると教えてもらっていた。
 わたしは学生時代に福岡にいた中野さんに「長崎街道を歩きたい」という話をしていた。九州旅行の話は一年以上前からしている。でもお互いの予定が合わず、話が進まない。

 七月末、ペリカン時代で「九州に行くのは秋にするか」みたいな話をしていたところ、カウンターにいた佐賀県出身の店主(映画『怪獣と老人』の主題歌を担当した増岡謙一郎さん)がわれわれの九州旅行に合わせて帰省するといい、八月三日の週なら行けるとなって、急遽、決まった。決まるときは決まる。人生はタイミングである。

 三日(月)、この日、久留米、太宰府は最高気温が四十度を超えた(福岡県の観測史上最高気温だったらしい)。
 わたしは鈴鹿からの移動で博多駅に着いたころ、すでによれよれになっていた。

 カプセルホテルのロッカーに荷物を入れ、行き先がわからないままタクシーに乗った。