2012/04/27

一軍半の心得

 昨年、二軍だった選手が、一軍にいる。
 レギュラーだった選手がメジャーリーグに渡ったり、ケガをしたりして、選手層が薄くなっている。
 一軍半の彼らにとってはチャンスだが、実績のあるレギュラーとちがい、すぐに結果を残さないと次の候補にチャンスが回る。

 勝負の世界は厳しい。

 プロになるような選手は、素質も力もある。レギュラーになるには、数少ないチャンスに力を発揮しなくてはいけない。実力も、運もいる。
 どんなに二軍で結果を出しても、ポジションの数は決まっている。スタメンの選手と変わらないくらいの実力があっても、代打や代走の数回のチャンスだけではなかなか結果を出せない。

 逆に、過去の実績があれば、ちょっとくらい不振が続いても、簡単には交代させられない。
 チャンスは平等にめぐってくるわけではない。

 走攻守三拍子揃った選手であればいいかといえば、そうとも限らない。
 チーム事情によっては走攻守それぞれのスペシャリストが必要な場合もある。左投手には滅法強いとか、守備力や足の速さがチーム内で突出しているとか、替えのきかない武器を持った選手のほうが、出番が回ってきやすい。

(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)

2012/04/21

しばらくぐだぐだします

……今年もまたゴールデンウィーク進行(月末のしめきりが前倒しになる)を忘れていて、今週は家にひきこもって、うどんと雑炊ばっかり食いながら、仕事に明け暮れているのだが、一日中眠い。

 季節の変わり目はどうも調子がよくない。無理をすると肩か肘か腰のどこかが悲鳴を上げる。

 一年通して、体調を維持することは不可能である。野球でいえば、捨てゲーム(何もしない日)を作って、中継ぎを温存するみたいなかんじで乗り切るしかない。

 昨年の秋以降、すこし文体を変えてみようと取り組んでいた。あと体調のよしあしについて書くのは控えようとおもったのだけど、しっくりこなかったので元に戻す。

 三十代後半あたりから「持続」についてよく考えるようになった。時間をかけて身につけた技法もだんだん通用しなくなる。新しいことをはじめようとおもったら、古いやり方を捨てなければならないこともある。

 本の読み方、仕事のやり方にもしても二十代のころのようにはいかない。
 昔できたことができなくなったけど、昔できなかったことができるようにもなっている。

 体力の温存の仕方、帳尻の合わせ方などは、今のほうがうまくなったとおもう。いっぽう何をやるにも慎重になっている。保身に傾きがちになっている。

 休みの日に何もしたくないとおもうことが増えた。

 無理にでも動いたほうがいい気がする。

 来月あたりからそうする。

2012/04/11

ここ数日

……楽しいイベント続きで、酒量が増える。
 ようやく春を実感。でも衣替えはまだ。

 金曜日、ブックギャラリーポポタムの企画展「十二篇」に行く。木村衣有子さんと武藤良子さんのトークショー(『もの食う本』ちくま文庫のコンビですね)。

 展示は、木村さんの短篇連作を武藤さんが壁に字を書き、絵をつけたもの。山雀さんのジーンズの話が読まされたのだけど、このおもしろさを説明するのはむずかしい。いつか機会があったら、読んでみてください。

 土曜日、西部古書会館の「古本博覧会」に行く。今、いちばん楽しみにしている古本催事かもしれない。
 この一年くらい関心領域(アメリカのコラムと私小説)が狭くなっているような気がするので、「古本博覧会」のようなバラエティに富んだ出品の古書展はありがたい。

 日曜日、ひさしぶりに下北沢。ほん吉、古書ビビビをまわり、いーはとーぼで珈琲を飲む。のんびりしていたら、午後六時前。
 風知空知のオグラさんの『次の迷路へ』のレコ発ライブの時間がせまっている。ライブはたっぷり三時間。前半がソロ、後半はオグラ&迷ローズのバンド編成だった。

 新しいアルバム『次の迷路へ』は、時間をたっぷりつかって録音された多彩かつ完成度の高い曲ばかりだ。
 昔のアニメの主題歌や歌謡曲、唱歌、合唱曲、ロック、シャンソンとオグラさんが通過した音楽が、まざりあって新種のポップスに生まれ変わっている。

 ステージの桜の花を散らしながら無邪気に歌う。「心配禁止」や「ビル風と17才」は、ライブで聴くとたまらない。「それゆけ貧乏紳士」のチンドン隊とのセッションもよかった。オグラさんの初バンジョーも聴けた。

 アルバムタイトル曲「次の迷路へ」は、「見つからないもの」を探す決意を歌っているのだけど、「わかりやすさ」ではなく、「わからない」ところに踏み込んでいく覚悟が伝わってくる。

 今年のはじめにオグラさんが二十歳前後にやっていたバンドの青ジャージの再結成ライブを見たときにもおもったことだけど、ジャンルにはまりきらず、安易な共感を求めない姿勢は、昔から変わっていない。簡単に答えのでないことの先にある「普遍性」を探して、ずっと「迷路」をさまよっているようにもおもえる。

 今回のアルバムでいえば、「あなたの暗闇」がその迷路の先の扉をあける鍵のような気がする。