四月中に書いておきたかったことをおもいだした。
おそらくキンドルがなければ、読まなかっただろうとおもう作品に新川直司の『四月は君の嘘』(現在八巻まで刊行、講談社)という漫画がある。
主人公の有馬公生は、機械のように精確な演奏が得意で、八歳でオーケストラと共演するような神童だったのだが、あることがきっっかけにピアノが弾けなくなる。
ところが、ある日、自由奔放にバイオリンを弾く宮園かおりと知り合い、公生はすこしずつ音楽の喜びに目覚めていくのだが……。
公生のピアノの技術は、親(母)から叩き込まれている。ある種の英才教育の壁をどう乗り越えていくのか。
うまいけど退屈な音楽とそうでない音楽のちがいとは?
というようなテーマをふみこみつつ、思春期の少年少女の淡い恋愛も描いている。
《痛みも苦しみも あがいた自分さえもさらけだして 弦に乗せる そうやって 音に自分が宿る》
これは、ヒロインの台詞(三巻)。あとスヌーピーの言葉が絶妙に引用されるシーンもある。
これほど物語の“熱”がちゃんと伝わってくる漫画はひさしぶりかもしれない。
二〇一三年、第三十七回講談社漫画賞受賞少年部門受賞。今年の十月からアニメ化(フジテレビ「ノイタミナ」枠)の予定らしい。