古本屋めぐりのついでに不動産屋の張り紙も見るのは習い性になっている。
上京した年——一九八九年ごろとくらべると、高円寺の家賃もずいぶん下がった。鉄筋で風呂付の部屋が五万円以下というのは昔は考えられなかった。
近所に書庫兼仕事部屋を借りて五年ちょっとになる。最初の単校本の印税を敷金礼金にあてた。ちょうどその年にいくつかの雑誌で連載が決まり、心おきなく本を買える状態にしておきたかったのである。
住居のほうは妻と家賃を折半しているのだが、ときどきポストに投函される中古マンションのチラシを見ると、「買ったほうが安いのではないか」と考えてしまう。でも細かく見ると、修繕費やら管理費やら固定資産税やらもふくめて計算すると、たいして家賃と変わらないような気もする。
(……以下、『閑な読書人』晶文社所収)