とくに書くことのない日のことを書いてみようとおもっていたら、昨日の昼、茨城南部で震度五弱(震源地は埼玉)、都内も震度四――。
自宅の本棚の上に積んでいた文庫本と新書がパラパラと落ちてくる。仕事部屋の木造アパートのほうは一冊も本が崩れていなかった。建物は軽いほうが、揺れに強い。地震の多い日本で木造住宅が普及したことには理由がある。
平屋の長屋で生まれ育ったせいか、平屋住宅が好きだ。今でもできれば、二間か三間の小さな木造の平屋の家で暮らしたい。といっても、長屋に住んでいたころは、二階以上の部屋に住むことに憧れていたのだが。
上京して最初に住んだのは東武東上線沿線の下赤塚の父が勤めていた工場の社員寮で部屋は一階だった。その年の秋、高円寺に引っ越して、それから築三十年以上の木造の風呂なしアパートを転々とした。その間、ずっと二階だった。二〇〇一年夏、二度目の立ち退きで古い木造アパートに懲りて、鉄筋のマンション(家賃は高円寺の相場からすると安い)に引っ越した。
上京以来、はじめて日当たりのいい部屋に住んだ。最初の一年で自分がすこし健康になったことを体感した。年中ひいていた風邪もあまりひかなくなった。風邪をひかなくなったのは日当たりだけが理由ではない。鉄筋の部屋に引っ越す一年前から、毎日新聞の夕刊でコラムを週一で連載することになったことも大きい。
週一の連載をするようになり、体調管理に気をつかうようになった。体調管理といっても「疲れたら休む」「からだを冷やさない」「酒を飲みすぎない」くらいなのだが、何も考えてなかったころと比べれば、それだけでもかなりの改善につながったとおもう。
不定期の仕事ばかりしていたときは、忙しい時期とひまな時期の差が激しくて、忙しい時期(たいてい月末)のあと、ほぼ体調を崩した。
ライターの仕事にかぎっていえば、本を読むとか文章を書くとか、いろいろ勉強はあるが、若いころはペース配分や体調管理を疎かにしがちだ。でも疎かにすると、長く続けられない。
わたしはそのことを学んだのは三十歳すぎてからなのだが、持続ということを軸にものを考えていけば、大きくまちがえることはないとおもうようになった。ただし、持続は保身に傾きやすいという欠点もある。
持続と保身の話はいずれまた、何も書くことがおもいつかなかった日に書いてみたい。