2014/06/10

昼寝夜起

 ふだんは朝寝昼起の生活なのだが、ここ数日、昼寝夜起になってしまっている。
 週末の古書展にも行けず、洗濯もせず、部屋にこもりがちで、だからといって、仕事がはかどるわけでもなく、石黒正数の漫画をだらだら読み返していた。

『それでも町は廻っている』(少年画報社)の十二巻に「高円寺」という地名が出てくる。
 二十年くらい前にちょっと売れたバンドでシンセを弾いていた人が、漫画の舞台の喫茶シーサイドにいる。
 その喫茶店でバイトしている主人公の歩鳥が、音楽好きの今先輩に「会いたくないですか」というと、先輩は「高円寺のライブハウスとか行けば今でも演奏してるから割と生で見れるよ」と答える。
 そんなちょっとしたやりとりなのだが、高円寺のライブハウスのかんじが妙に出ていておかしい。

 バンドが解散した後も、別のバンドやソロとして音楽活動を続けている人は多い。ただし、その後もずっとライブハウスに観に来るような客はコアなファンだ。でも「ちょっと売れていた」ころより、ずっとよくなっていることもよくある。それがなかなか外の世界に伝わらない。

 元バンドマンのシンセの人は、その後、アイドルに曲を提供したり、ミュージカルの曲を書いたり、けっこう裏方の仕事をしている。
 年齢は四十五歳。結婚もしていて、ステージ以外の素顔はすっかり中年になっている。
 喫茶シーサイドでは、ひさしぶりにそのミュージシャンが母親と対面するシーンがあるのだが、その会話がものすごくリアルなのだ。
 母が、シンセをやっている息子に、「例えばジブリ映画の音楽とか」そういう仕事はやらないのかみたいなことをいったり……。

 知人のミュージシャンも田舎に帰ると親に「あんたは紅白とか出れんの」といわれるという話を聞いたことがある。